「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」(本記事では「公益法人法」と呼びます)の改正に伴い、公益法人会計基準が大幅に見直されることになりました。
公益法人会計基準の何がどう変わるのか、また、どんな準備が必要なのか関心をお持ちの公益法人の職員様も多いことでしょう。
本記事では、公益法人会計基準の改正で注目されている「正味財産増減計算書」が「活動計算書」に変更となる点について解説します。
従来の正味財産増減計算書は、公益法人の正味財産(純資産)の変動を明らかにすることを目的としていました。しかし、この形式では、公益法人の多様な活動内容や資金の流れを十分に把握することが困難でした。
そこで、公益法人法改正の一環として、会計基準が見直され、公益法人の活動状況をより的確に示すため、正味財産増減計算書は活動計算書へと変更されました。
活動計算書の導入により、公益法人の活動が財務的にどのような結果をもたらしたのかを、より明確かつ分かりやすく示すことができるようになりました。
従来の正味財産増減計算書では、正味財産の増加・減少の表示に主眼が置かれていました。また、様式にあるとおり、お金の使い途に制限がなく自由に使える一般正味財産の部と、使い途が決まっている指定正味財産の部に分かれていました。
一方、新しい「活動計算書」では、活動実態を表示することに主眼が置かれ、経常活動とその他活動とに分かれており、「活動別に生じた収益・費用」を明示するものとなっています。
企業の損益計算書(P/L)により近い感覚で、非営利法人の会計に詳しくない人にも組織活動が直感的に把握しやすくなっています。
活動計算書では、「経常活動」と「その他活動」の2つの区分が導入されました。
この「経常活動」と「その他活動」にはどのような内容を表示するのでしょうか。
それぞれ次のような特徴があります。
公益目的事業の収益・費用や理事会開催などに必要な管理費、寄付金収入など、法人が日常的に行う主要な活動を含む区分です。
この区分では、活動ごとの収益と費用の流れが明確に示され、公益法人が通常どんな活動を行い、どんな収益が生じて、何にお金を使っているのかが分かります。
不動産を売却したり、突発的な自然災害が生じたことによる損失などイレギュラーなものを計上する区分になります。
この区分表示により、公益法人がどのような活動を主要な事業として展開し、それ以外の活動がどのような影響を与えているのかが明確になります。
また、全体の金額が大きくともその他活動の比率が高い場合は、何らかの突発的な要因によって影響を受けた状態であることが分かります。
これらの表示により寄付者や支援者にとって信頼性の指標として機能することが期待されます。
従来の「正味財産増減計算書」では、「指定正味財産」の指定を解除して「一般正味財産」に振り替えて使用するという流れが定められていましたが、活動計算書にはそのような考え方はありません。
また、一般正味財産の部は「経常増減の部」と「経常外増減の部」に区分されていました。これは、通常反復的に発生する取引や事象による増減を「経常増減」とし、それ以外の非反復的・特殊性の高い取引や事象による増減を「経常外増減」として区分する考え方でした。
経常・経常外はあくまで発生頻度や通常性を軸とした区分でしたが、活動計算書では「どのような活動から収益や費用が発生したか」という機能的な視点が重視されます。
活動計算書の導入により公益目的事業会計、収益事業等会計、法人会計に3区分されていた正味財産増減計算書内訳表は、作成不要となりました。
ただ、これらの内訳情報は公益法人法に定める公益財務基準の適合性を判断するために引き続き必要であるため、活動計算書の本表ではなく、附属明細書や注記に内訳情報を記載することになっています
令和6年12月に内閣府公益認定等委員会から発出された「公益法人会計基準の運用指針」によると、活動計算書の注記は以下の様式となります。
新公益法人会計基準の適用開始日は、2025年4月1日以降に開始する事業年度からです。ただし3年間の経過措置が設けられており、それまでの間に任意に適用を開始することができますが、2028年4月1日からはすべての公益法人が活動計算書に移行することとなります。
※今後の情報については弊社でも引き続き最新情報を発信していきますが、負担軽減策などの最新情報は公益法人インフォメーションをご確認ください。
新基準への対応をスムーズに進めるため、会計担当者や事務局長の方は以下の点に注意して準備を進める必要があるでしょう。
以下に準備しておくべきことの一例を紹介致します。
会計ソフトの 確認 |
・現在使用中の会計ソフトが新基準に対応しているか確認する。 ・必要に応じてアップデートまたは新しいソフトウェアの導入を検討する。 |
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注記情報の整備 | ・新基準に基づく内訳明細情報の作成方法を学ぶ。 ・実務に適用するためのテンプレートやチェックリストを準備する。 |
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社員(会員と称している法人が多い)は法人の構成員であり、最高意思決定機関である社員総会の一員であるため、法人の外部とは言えない存在です。ここでいう社員とは法律用語で、法人の構成員を指し、議決権を行使する者をいいます。
なお、上記社員が会社などの法人である場合、その役員や使用人も外部理事になることはできません。(公益法人法施行規則改正後第4条3号)財団法人の設立者は、財団の設立を目的に財産を提供する者であり、法人の外部とは言えない存在です。
なお、上記設立者が会社などの法人である場合、その役員や使用人も外部理事になることはできません。(公益法人法施行規則改正後第4条4号)
新公益法人会計基準への移行は、特に小規模法人にとって大きな課題となります。
本記事が新公益法人会計基準が求める財務報告を実現できる一助になれば幸いです。
本記事の監修をいただいた元内閣府公益認定等委員会常勤委員の出口正之先生による、”公益法人法改正による影響”を解説するセミナーを開催致します。
セミナーでは本記事で解説した内容をさらに詳しく説明します。
法改正の経緯や公益法人が対応すべきことがわかります。