改正公益法人法が2025年4月に施行される予定です。
そこで本記事では、公益法人法の改正内容の全体像を説明しながら、特に変更が生じる3つのポイントについて解説します。
公益社団・財団法人の皆様の本法施行に向けた準備にお役立ていただければ幸いです。
2025年4月に施行が予定されている公益法人法の改正では、法人がより柔軟かつ効率的に運営できるよう、いくつかの重要な変更があります。具体的には次の3つが中心となります。
公益法人法を改正する主な目的は、法人がより柔軟かつ効率的に運営できるようにすることです。これまで、中小規模の法人は、厳格な財務規律やガバナンス基準が事業運営の妨げとなっていました。改正によって、法人は自主的にガバナンスを強化し、より迅速に事業を展開できる体制を整えることが期待されています。
また、行政手続の簡素化も進められ、事業変更や新規事業の立ち上げが容易になり、社会的ニーズに対応しやすくなるでしょう。本改正は、公益法人業界の改革に留まらず、社会全体を良くするための改革と言えます。
2008年に施行された公益法人法は、法人が公益目的事業を推進するために制定され、厳格な財務規律やガバナンス基準が設けられました。しかし、コロナ禍や自然災害の頻発などの社会的変化により、より柔軟な運営体制が求められるようになりました。
現行制度では、法人は収支相償原則や遊休財産の保有制限などの厳しい規制を受けており、特に中小規模の法人にとっては、長期的な事業計画の策定や迅速な対応が難しいという課題がありました。
これに対応するため、2025年に予定されている改正公益法人法の施行では、財務規律の緩和やガバナンスの強化を進め、法人が運営の自由度を高め、持続的な成長を実現できるようにするための施策が導入されます。
改正公益法人法は、2025年4月1日に施行されます。この日から、全ての公益法人は新しい法律に基づいて運営を行う必要があります。
改正後の法律には、財務規律の緩和、ガバナンスの強化、行政手続の簡素化など、法人が効率的に運営できるための変更が盛り込まれています。
財務規律とは、法人が財務運営において守るべきルールのことを指します。具体的には、「収支相償原則」や「遊休財産規制」などが含まれます。これらの規則により、法人は持続的な運営が可能となるよう、収支のバランスを取りながら事業を行うことが求められています。
従来の収支相償原則では、毎年の収支均衡が求められていましたが、これが法人の財務運営に硬直性をもたらしていました。
今回の改正では、中期的な期間(5年間)での収支均衡が認められるようになります。これにより、一時的な赤字を許容しつつ、長期的な事業計画に基づいて財務を運営することが可能になります。
公益法人法の改正により、「遊休財産」という名称が「使途不特定財産」に変更されました。この変更は、遊休財産という名称が「無駄な財産」という誤解を生じさせる可能性があるとの指摘に基づいたものです。
そして、従来は公益目的事業費の1年分が上限とされていましたが、過去5年の平均が上限とされ、中長期での運営を可能とするものとなっています。
公益法人が事業内容を変更する際の認定手続が大幅に簡素化されます。軽微な変更や公益目的事業に実質的な影響を与えない変更に関しては、事前認定が不要となり、事後届出で対応できるようになりました。
これにより、法人は迅速に事業を進めることができ、柔軟な経営ができるようになると期待されています。
公益法人法の改正に伴い、公益認定基準に新たな要件が追加され、特に重要な変更として外部監事の登用が義務付けられました。法人運営に外部の視点を取り入れることで、ガバナンスの強化と運営の透明性を向上させることを目的としています。
これまでは、主に法人内部の者が監査を行っていましたが、外部監事の導入により、第三者の視点から法人の運営を監視する体制が整備されることになります。外部監事は、法人の過去10年以内に従業員や役員として関与していない第三者が対象となり、これによりガバナンスが強化され、法人の透明性が向上します。
改正公益法人法では、財務規律が緩和され、中期的な収支均衡を図ることができるようになります。法人はこの改正に対応するために、財務計画を中期的な視点で再構築し、収支のバランスを5年間などの中長期的なスパンで管理できる体制を整える必要があります。
3区分経理で財務諸表や報告書を適切に作成・公開する体制を整えることが必要です。財務情報や役員報酬の開示計画も事前に整えておくことが求められます。
改正法の内容を理解し、新しい法制度に対応できるよう、職員や役員への研修や教育プログラムを実施することが重要です。
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法改正の経緯や公益法人が対応すべきことがわかります。