改正公益法人法が2025年4月に施行される予定です。  

そこで本記事では、公益法人法の改正内容の全体像を説明しながら、特に変更が生じる3つのポイントについて解説します。

公益社団・財団法人の皆様の本法施行に向けた準備にお役立ていただければ幸いです。

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本記事は内閣府公益認定等委員会委員、大阪府公益認定等委員会委員長、政府税制調査会特別委員などを歴任された国立民族学博物館名誉教授の出口正之先生による監修を受けています。
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目次

そもそも公益法人法とは
公益法人法 改正の概要
 公益法人法改正の目的は?
 これまでの問題点と改正の背景
改正公益法人法の施行日は?
公益法人法改正 3つのポイント
 1. 財務規律の柔軟化・明確化
  そもそも財務規律とは
  ・収支相償が見直され、中期的期間で収支の均衡を図れるようになる
  ・公益目的事業継続予備財産の創設
  ・公益充実資金の創設
  ・遊休財産が使途不特定財産に変更
 2. 行政手続の簡素化・合理化
  ・変更認定手続の簡素化
  ・収益事業に関する変更の簡素化
  ・公益目的事業に関する変更の対応
 3. 自律的ガバナンスの充実と透明性の向上
  ・公益法人に3区分経理が義務化
  ・外部監事の登用が例外なく義務化
公益認定法の改正に備えて準備すべきこと
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本記事の企画者について

そもそも公益法人法とは

  • 公益法人法とは、正式には「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」を指します(本記事では「公益法人法」と略します)。
  • この法律は、公益目的事業を行う公益社団・公益財団法人の運営やガバナンスを監督するための枠組みを提供し、法人が公正で透明な運営を行うための基準を定めています。2008年に施行され、法人の財務規律やガバナンスを強化することで、公益性の高い事業の推進を支援してきました。
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公益法人法 改正の概要

2025年4月に施行が予定されている公益法人法の改正では、法人がより柔軟かつ効率的に運営できるよう、いくつかの重要な変更があります。具体的には次の3つが中心となります。

1.財務規律の見直し
2.行政手続の簡素化
3.ガバナンスの強化
これらの変更により、公益法人は経営判断の自由度が高まり、社会的課題への対応力が強化されることが期待されています。

公益法人法改正の目的は?

公益法人法を改正する主な目的は、法人がより柔軟かつ効率的に運営できるようにすることです。これまで、中小規模の法人は、厳格な財務規律やガバナンス基準が事業運営の妨げとなっていました。改正によって、法人は自主的にガバナンスを強化し、より迅速に事業を展開できる体制を整えることが期待されています。

また、行政手続の簡素化も進められ、事業変更や新規事業の立ち上げが容易になり、社会的ニーズに対応しやすくなるでしょう。本改正は、公益法人業界の改革に留まらず、社会全体を良くするための改革と言えます。

これまでの問題点と改正の背景

2008年に施行された公益法人法は、法人が公益目的事業を推進するために制定され、厳格な財務規律やガバナンス基準が設けられました。しかし、コロナ禍や自然災害の頻発などの社会的変化により、より柔軟な運営体制が求められるようになりました。

現行制度では、法人は収支相償原則や遊休財産の保有制限などの厳しい規制を受けており、特に中小規模の法人にとっては、長期的な事業計画の策定や迅速な対応が難しいという課題がありました。

これに対応するため、2025年に予定されている改正公益法人法の施行では、財務規律の緩和やガバナンスの強化を進め、法人が運営の自由度を高め、持続的な成長を実現できるようにするための施策が導入されます。

  
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講師は内閣府公益認定等委員会委員、大阪府公益認定等委員会委員長、政府税制調査会特別委員などを歴任した第一人者の出口正之氏。

改正公益法人法の施行日は?

改正公益法人法は、2025年4月1日に施行されます。この日から、全ての公益法人は新しい法律に基づいて運営を行う必要があります。

改正後の法律には、財務規律の緩和、ガバナンスの強化、行政手続の簡素化など、法人が効率的に運営できるための変更が盛り込まれています。

公益法人法改正 3つのポイント

2025年の公益法人法改正では、法人の運営に大きな影響を与える3つの主なポイントがあります。

1. 財務規律の柔軟化・明確化

そもそも財務規律とは

  • 財務規律とは、法人が財務運営において守るべきルールのことを指します。具体的には、「収支相償原則」や「遊休財産規制」などが含まれます。これらの規則により、法人は持続的な運営が可能となるよう、収支のバランスを取りながら事業を行うことが求められています。

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◆収支相償が見直され、中期的期間で収支の均衡を図れるようになる

従来の収支相償原則では、毎年の収支均衡が求められていましたが、これが法人の財務運営に硬直性をもたらしていました。

今回の改正では、中期的な期間(5年間)での収支均衡が認められるようになります。これにより、一時的な赤字を許容しつつ、長期的な事業計画に基づいて財務を運営することが可能になります。

◆公益目的事業継続予備財産の創設

緊急時に備えて、法人が1年分の事業費を超える財産を保有できるようになる「公益目的事業継続予備財産」が創設されます。

「公益目的事業継続予備財産」によって公益法人は災害やパンデミックなどの緊急事態にも対応できる資金を確保し、安定した事業運営を維持することができるようになります。

◆公益充実資金の創設

従来の特定費用準備資金と資産取得資金が統合され、資金活用の柔軟性を高めた仕組みとして「公益充実資金」が創設されました。

当該資金の積立ては、法律上、中期的収支均衡において費用とみなすこととされました。これにより資⾦活⽤について法⼈の経営判断を重視し、将来の公益⽬的事業を充実させることができるようになりました。

これによって法人は収益事業などで得た資金を、より柔軟に公益目的事業に再投資できるようになります。たとえば新規プロジェクトや事業の拡大をより迅速に進められるようになることが期待されています。

◆遊休財産が使途不特定財産に変更

公益法人法の改正により、「遊休財産」という名称が「使途不特定財産」に変更されました。この変更は、遊休財産という名称が「無駄な財産」という誤解を生じさせる可能性があるとの指摘に基づいたものです。

そして、従来は公益目的事業費の1年分が上限とされていましたが、過去5年の平均が上限とされ、中長期での運営を可能とするものとなっています。

2. 行政手続の簡素化・合理化

◆変更認定手続の簡素化

公益法人が事業内容を変更する際の認定手続が大幅に簡素化されます。軽微な変更や公益目的事業に実質的な影響を与えない変更に関しては、事前認定が不要となり、事後届出で対応できるようになりました。

これにより、法人は迅速に事業を進めることができ、柔軟な経営ができるようになると期待されています。

◆収益事業に関する変更の簡素化

従来、収益事業に関しては、公益目的事業への影響や特別の利益がないか等を慎重に評価されていたため、収益事業の変更や新規事業の開始には複雑な手続きが伴っていました。

今回の改正により、収益事業が公益目的事業に直接影響を与えない場合には、事前認定が不要となり、事後の届出のみで対応できるようになりました。

◆公益目的事業に関する変更の対応

公益目的事業に関する大規模な変更については引き続き事前認定が必要ですが、軽微な変更に関しては事後届出で対応可能となりました。

これにより公益法人は社会のニーズに応じて迅速に事業を見直すことができ、効率的な事業運営ができるようになると期待されています。

3. 自律的ガバナンスの充実と透明性の向上

今回の公益法人法の改正では、財務規律や手続の緩和措置がはかられた一方で、法人が自律的にガバナンスを強化し、透明性の高い運営を行うことが求められます。

外部監事の登用や役員報酬の透明性向上などが義務付けられ、法人運営に外部の視点を取り入れることで、公益法人の社会的信頼を強化することが狙いです。

◆公益法人に3区分経理が義務化

公益法人法の改正により、公益法人には公益目的事業会計、収益事業等会計、法人会計の3区分経理が義務付けられることとなりました。この改正は、法人の財務状況をより透明にすることを目的としており、各事業の財務収支を明確にすることで、外部からの監視を受けやすくします。

従来、貸借対照表の3区分(内訳表)は一部のみの適用とされ、多くの法人が作成していませんでしたが、今回の改正で貸借対照表内訳表に相当する内容を財務諸表の注記に記載することとされました。

◆外部監事の登用が例外なく義務化

公益法人法の改正に伴い、公益認定基準に新たな要件が追加され、特に重要な変更として外部監事の登用が義務付けられました。法人運営に外部の視点を取り入れることで、ガバナンスの強化と運営の透明性を向上させることを目的としています。

これまでは、主に法人内部の者が監査を行っていましたが、外部監事の導入により、第三者の視点から法人の運営を監視する体制が整備されることになります。外部監事は、法人の過去10年以内に従業員や役員として関与していない第三者が対象となり、これによりガバナンスが強化され、法人の透明性が向上します。

公益認定法の改正に備えて準備すべきこと

2025年4月1日の改正公益法人法の施行までに、公益法人は以下の準備を進める必要があります。
1.財務規律の見直しと運用方針の調整

改正公益法人法では、財務規律が緩和され、中期的な収支均衡を図ることができるようになります。法人はこの改正に対応するために、財務計画を中期的な視点で再構築し、収支のバランスを5年間などの中長期的なスパンで管理できる体制を整える必要があります。

2.ガバナンス体制の強化
外部監事や外部理事に適切な人材を確保する必要があります。また、行政庁に提出した報告が原則として公開される体制となるため、事業報告などについて公開に備えることが求められます。
3.3区分経理への対応

3区分経理で財務諸表や報告書を適切に作成・公開する体制を整えることが必要です。財務情報や役員報酬の開示計画も事前に整えておくことが求められます。

4. 職員や役員への教育・研修

改正法の内容を理解し、新しい法制度に対応できるよう、職員や役員への研修や教育プログラムを実施することが重要です。

このような準備を施行日までに進めることで、公益法人は新しい法制度に適応し、持続的かつ安定した運営が可能となります。
メリット
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記事執筆:全国公益法人協会 小野

記事監修:出口正之先生

【プロフィール】
内閣府公益認定等委員会委員、大阪府公益認定等委員会委員長、政府税制調査会特別委員などを歴任。国立民族学博物館名誉教授。『公益・一般法人』編集委員長。日本の非営利団体研究第一人者のひとり。
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本記事監修者 出口正之先生による
公益法人法の改正に備えるセミナーを開催します

本記事の監修をいただいた元内閣府公益認定等委員会常勤委員の出口正之先生による、”公益法人法改正による影響”を解説するセミナーを開催致します。

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本記事の企画者について

全国公益法人協会

財団・社団を半世紀以上にわたり多面的に支援。
1967 年に創立し、半世紀以上にわたり長年蓄積した知識・経験によって財団法人・社団法人の会計税務や 法人運営などを多面的に支援しています。
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公式サイト https://koueki.jp/

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